今日は、最近読んだ本の中で「緒方貞子 戦争が終わらない世界で」を読んだ感想について記事を書いてみたいと思います。
皆さんは、緒方貞子さんという人物をご存知でしょうか?
私は、彼女が亡くなる時まで、その存在を知りませんでした。(無知ほど怖いものはありませんね。)緒方貞子さんは、1991年に日本人としては初めての国連難民高等弁務官に就任しました。
彼女が就任した当時、ちょうど冷戦が終わり、世界では国家間の戦いから国内の民族間紛争が勃発していました。
発展してきました。
そこで彼女は、近代史の中でも最大の難民問題に直面します。
湾岸戦争終結後のイラクでは、民族間紛争によりクルド難民140万人がイランへ、40万人がイラク・トルコ国境地域に流出しました。
しかし、当時のトルコは自国の治安維持のために、難民受け入れを拒否し国境を閉ざしてしまいました。
難民条約では、難民は次のように定義されています。
『「難民」は、人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々。』と。
つまり、国境の“外”に出なければ「難民」と定義されず、そこに第三者が干渉することはできなかったのです。
「国境を越えていない」人々に介入するべきか。
組織の幹部からは、「国境を超えていない人々に介入してはならない。それを厳格に順守するべきだ」とする意見も多かったようです。
2時間以上にわたって、幹部の意見に耳を傾けた緒方貞子さんは決断します。
「私は、介入することに決めました。なぜならUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、被害者たちが国境を越えたかどうかに関わりなく、被害者たちのもとに、そして側にいる必要があるからです。」と。
国境を超えていない難民を救うことは、難民条約に背くことになり、無効となってしまう可能性もありましたが、緒方貞子さんは、人間として“救わなければならない”基本原則を守るために、行動規範を変えたのです。
そして、UNHCRという組織は、イラク領土内でクルド難民を救済することとなりました。
凝り固まった前例を踏襲するのではなく、現場の状況に応じて、人間が守るべき道徳規範に向き合い、リーダーシップを発揮しました。
それが緒方貞子さんを『小さな巨人』と言わしめた所以ではないでしょうか。
私は、この書籍で次のことも学びました。
難民を救済をすることが大事なのではなく、難民を出させない努力もしなければならないと。
世界平和は、核兵器の廃絶や軍縮によっては成り立ちません。
国内紛争、差別、貧困を無くしてくことが安全保障につながり、ひいては世界平和につながっていくことをこの書籍で学びました。
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