「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」の感想:追記③

「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」の感想:追記③好きなもの・こと
「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」の感想:追記③
「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」の感想:追記②

闇堕ちしかけるピーターを救う。

グリーンゴブリンによってメイおばさんを失ったトムホピーターは、その悲しみから復讐という闇に囚われてしまいます。

グリーンゴブリンとの最終決戦で、とうとうトムホピーターはグリーンゴブリンを追い詰めますが、そんな状況になってもグリーンゴブリンは不気味な笑みを浮かべ続けます。

「俺が死んでも、復讐に囚われ、闇に堕ちてしまえば、俺の勝ちだ」と言わんばかりに。

彼の思惑はスパイダーマンの道徳心を真っ向から否定することにあったようです。

人間としての煩悩からは逃れられない。

グリーンゴブリンの思惑通りトムホピーターは彼にとどめを刺そうとします。

スパイダーマンは復讐という闇に囚われて、“親愛なる隣人”は“殺人者”へと変わろうとしていたのです。

そうして闇に堕ちる一歩手前で、彼を助けた人物がいました。

サム・ライミ版のトビーピーターです。

彼の世界では、両親のように慕っていたベンおじさんを失ったことによって、復讐という闇に囚われてしまい、ベンおじさんを殺した犯人を追い詰め、その結果、犯人を事故で亡くした過去があります。

犯人が亡くなった直後、復讐を見事に果たし、高揚感で包まれたトビーピーターですが、帰宅後メイおばさんに「誰であっても人が死ぬことは悲しいことよ」と諭され、復讐はとても虚しいことだと理解するのです。

過去に自分も復讐に囚われた経験から、“復讐しても亡くなった人は生き返らない、何も変わらない、虚しさだけが残る”ということを学んだトビーピーターは、トムホピーターに歩むべき道を指し示し、闇に堕ちかけるトムホピーターを見事に救ったのです。

私は、この演出にとても心を打たれました。

セカンドチャンスをやり直すアンドリューピーター

今作の予告動画の中でファンの間で注目されたシーンがあります。

落下しているMJとそれを助けようと手を差し伸べるスパイダーマンのシーンです。

過去作のスパイダーマンを観ている人はおわかりだと思いますが、このシーンは過去作のオマージュとも言えるでしょう。

サム・ライミ版ではMJを救うことができましたが、アメスパ版ではグウェン・ステイシーを救うことができなかったため、今作の結末は一体どうななるのかと話題に挙がっていたはずです。

結論から述べてしまうと、今作では無事にMJは救うことができました。

しかし、それは、若いピーターが救ったのではなく、アメスパ版のアンドリューピーターが救ったのです。

アメスパ版では、最愛の恋人グウェン・ステイシーを落下から助けられなかったことから、アンドリューピーターは自らを責め続けてしまいます。

なぜ助けられなかったのか、なぜ関わりを断ち切れなかったのか、そもそも出会わなければこんなことにならなかったのに。

最愛の恋人を失った悲しみは、スパイダーマンの活動を一時やめてしまうほど、大きなものでした。

しかし、その最愛の恋人の言葉が彼をもう一度ヒーローとしての道を歩ませました。

今日のように天気が良い日に希望を感じることは簡単なことです。

ですがこの先、そうでない日もあります。

孤独だと感じる日もあるでしょう。

そんな時こそ希望が必要なのです。

どれほど落ち込んでいても、どれほど喪失感に苛まれても、忘れないでほしい。

希望を抱き続けなくてはならないことを。

希望を捨てず、苦しみに負けない強さを持つのです。

私は、皆さんに希望そのものになってもらいたい。

希望が必要なのです。

たとえ失敗に終わっても、それこそが最高の生き方です。

周りにいるのは今の私たちを作ってくれた人たちです。

お別れするのは寂しいですが、お互いに与え合ったものがこれからの人生で私たちに教えてくれるはずです。

自分が何者なのか。

何をすべきなのか。

『二度と同じ過ちは繰り返さない。』

きっとアメスパ版の世界では、アンドリューピーターはそう心に誓って生きてきたのでしょう。

MCU版MJを落下から無事に救うことができた瞬間、過去の呪縛からの解放、そして救うことができた安心感からでしょうか。

アンドリューピーターは何とも言えぬ表情をするのです。

このシーンに私はとても感動して、涙腺崩壊しました。

ジョン・ワッツ監督は、この映画のシリーズを通して、次のようなことを言っています。

「人は失敗してしまうものだ。それでも人はセカンドチャンスを得てやり直すことができる。」

このMCU版スパイダーマンにおいて、アンドリューピーターもセカンドチャンスをやり直すことができたのでしょう。

人生においてのセカンドチャンスを見事に表現した作風に、私は大変感銘を受けました。

スパイダーマンという希望が僕らの心を動かした瞬間です。

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